ちっちの物語その52~紫色の袴

ジアス

2012年02月19日 22:39

 3日になりました。

 2階の和室で眠っているちっちを、今日は納棺して通夜が行われる式場に運ぶ日でした。夕方からの通夜の前に、ちっちを1階のリビングに降ろしました。

 納棺にあたって、ちっちに、卒業式の時に着せてあげるつもりだった紫色の袴を着せてあげることにしました。その袴は上の娘が小学校を卒業する時に、隣の家の奥様から借りて着せてあげたものでした。
 わが家は10年前に今の場所に家を建てて引っ越してきたのですが、その時に隣にすでに隣に住んでいたご夫婦には本当にお世話になっていました。わが家が引っ越してきた時、まだ3歳だったちっちをとても可愛がってくださいました。奥様は着物の着付けを教えていて、上の娘の小学校の卒業式の時には、隣の家で着物を着せてもらってから、卒業式に出ました。このときの記事には着物のことには何も触れていませんでしたが、この時に触れている「出会ったこと」の運命が、まさか3年後にこのような続きになるとは思ってもみませんでした。ちなみに、ちっちの担任と、この時のちっちの姉の担任は、同じ先生なのです。

 隣のご夫婦にもちっちの病状が深刻なことを伝えていなかったので、2日に私たち夫婦が訪ねてちっちが亡くなったことを伝えた時には大変驚かれてしまいました。すぐにわが家をご夫婦で訪ねてくださり、奥様から「ちっちの卒業式をしてあげよう。この袴を着せてみんなで卒業式をして送り出してあげよう。」というお話を頂いた時には本当にありがたく、そのご好意に甘えることにしました。

 納棺に先立つ湯灌がわが家のリビングで行われ、ちっちの身体を拭いてあげたあとで紫色の袴を着せて、ちっちを棺に納め、庭からクルマに乗せてちっちを通夜の式場に運びました。
 式場はわが家から歩いても5分程度の近い場所で、すでに花でいっぱいの祭壇がしつらえられていて、ちっちの棺が、満面の笑みをたたえるちっちの写真の前にそっと置かれました。この写真は、妻が携帯で撮ったものを大きく引き伸ばしたものなので、近くで見るとぼやけた粗い写真に見えましたが、参列者が座る椅子の場所からはとても素敵な笑顔のちっちに見えました。

 3日も穏やかに晴れていましたが、その陽が沈む頃、式場にちっちがお世話になった皆さんが、続々と集まってこられました。

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