ちっちの物語その54~輝く雪

ジアス

2012年03月05日 22:39

 一夜明けた翌朝は、うっすらと雪が積もっていました。
 世の中は今日から御用始なので、昨夜ほどではありませんでしたが、それでもたくさんの方々が、ちっちとの最後のお別れに来てくれました。

 葬儀の終わりに、ちっちの棺を会場の真ん中に置きました。ちっちは素敵な紫色の袴を着て、本当にただ眠っているだけのような、優しい顔をしていました。ちっちの友達や先生が、そして私たちも、式場にあった花をいっぱい、ちっちのそばに入れてあげました。一昨日から何人もの友達が、ちっちのために手紙を書いて持ってきてくれましたが、それも全部、ちっちが読むようにちっちのそばに入れてあげました。
 いつまでもいつまでも、ちっちがここにいるみんなの記憶に残っていてほしい、みんなの心の中で、ちっちはいつまでも生きていてほしい、そんなことを考えながら、ちっちとお別れするみんなの姿を見ていました。

 やがて、ちっちを乗せるリムジンが、式場の前に到着しました。外は今朝降っていた雪もやんでいましたが、式場の前に集まったみなさんに見送られてちっちと私たち家族が出発する時間になりました。
 私が集まってくださったみなさんに改めてお礼をした後で、隣にいた妻が簡単にお礼をしました。そして、その横にいたちっちの姉も、一言お礼を言ったちょうどその時、きらきらと輝くような雪が舞い降りてきたそうです。まるでそこにちっちがいて、みんなにお礼を言ったかのように。
 集まってきてくれた人たちが、何人も、後でそう言ってくれました。

 ちっちと私たちを乗せたリムジンは、わが家の前と小学校の前をゆっくりと通ってくれました。ちっちの想い出がいっぱい詰まった場所は、やはりちっちの大好きだったわが家と小学校でした。小学校のまわりをぐるりと一周している間、ちっちの笑顔を思い出していると、涙が止まりませんでした。

 そして、数時間後、ちっちは小さな骨壷に入って、わが家に帰ってきたのでした。

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